彼女を10日でオトします
「貴兄! いつしたのよ!?」
「ふっふっふ。響ちゃんが生れ落ちたその日だ。あまりの可愛さに……。
響ちゃんがいつか、どこぞの野郎に貰われていってしまうと思ったら、悔しくて」
き、鬼畜! 生まれたての赤子に!
隣の家のお兄ちゃんが、父親みたいなこと考えてんじゃないわよ……。
絶句している私。
隣から、ガタっと物音が聞こえた。隣の机が少しずれている。戸部たすくが立ち上がっていた。
戸部たすくは、無言でスタスタと貴兄が座っているデスクへ向かった。
貴兄の横で立ち止まった戸部たすくは、デスクに右手を置いた。
ギ。金属がきしむ。
一言も喋ってはいけない、というようなオーラが戸部たすくの背中からにじみ出ているような気配を感じる。
そのオーラに従うわけではなかったけれど、私と琴実さん、ヒデさんは、口をつぐんでいた。
息をのむ。
戸部たすくは、もう一度デスクをきしませ、左手を貴兄の後頭部にそっと這わせた。
そして、戸部たすくは顔を傾けて、とても自然な動きで貴兄の顔に顔を近づけていく。
落ちる沈黙。
貴兄と戸部たすくの顔は重なったまま。
カチャン。貴兄の手から離れた箸は、デスクの上で一度跳ね上がり、床へ落ちた。
「キャー! たすく、あんた、男もいけるクチだったの!?」
「たすく! いくら真田センセが女みてーな顔してるからって、おい!!」
騒ぎ出した琴実さんとヒデさんの声に答えるかのように、戸部たすくは、ようやく貴兄から顔を離した。
貴兄は、焦点の合わない目を見開いたまま呆然としていた。
え……、まさか……。
「ふっふっふ。響ちゃんが生れ落ちたその日だ。あまりの可愛さに……。
響ちゃんがいつか、どこぞの野郎に貰われていってしまうと思ったら、悔しくて」
き、鬼畜! 生まれたての赤子に!
隣の家のお兄ちゃんが、父親みたいなこと考えてんじゃないわよ……。
絶句している私。
隣から、ガタっと物音が聞こえた。隣の机が少しずれている。戸部たすくが立ち上がっていた。
戸部たすくは、無言でスタスタと貴兄が座っているデスクへ向かった。
貴兄の横で立ち止まった戸部たすくは、デスクに右手を置いた。
ギ。金属がきしむ。
一言も喋ってはいけない、というようなオーラが戸部たすくの背中からにじみ出ているような気配を感じる。
そのオーラに従うわけではなかったけれど、私と琴実さん、ヒデさんは、口をつぐんでいた。
息をのむ。
戸部たすくは、もう一度デスクをきしませ、左手を貴兄の後頭部にそっと這わせた。
そして、戸部たすくは顔を傾けて、とても自然な動きで貴兄の顔に顔を近づけていく。
落ちる沈黙。
貴兄と戸部たすくの顔は重なったまま。
カチャン。貴兄の手から離れた箸は、デスクの上で一度跳ね上がり、床へ落ちた。
「キャー! たすく、あんた、男もいけるクチだったの!?」
「たすく! いくら真田センセが女みてーな顔してるからって、おい!!」
騒ぎ出した琴実さんとヒデさんの声に答えるかのように、戸部たすくは、ようやく貴兄から顔を離した。
貴兄は、焦点の合わない目を見開いたまま呆然としていた。
え……、まさか……。