彼女を10日でオトします
「たいした自信ね」

 ダスターを揉みながら、俺を一瞥する。
 横目でちらっと。背中がゾクっとする。
 その視線は、俺を誘惑してるんじゃないかって思っちゃうほど魅力的だった。

「自信じゃないの。予言」

 そう、予言。本当のところは、希望なんだけれども。

「たすくさん」キョンは、唇だけで、薄く笑った。俺をバカにしてるってふうに。「預言者の資質、ないわね」

 キョンは、蛇口のレバーを濡れた手で押し下げて、ダスターを絞る。
 ぎゅ、ぎゅ。

 俺は、何も言えず、目線を下げて滴り落ちる水をただ見ていた。
 
 指先がチリチリする。
 背中の『ゾクっ』が連続して、ゾクゾクになり、ついには、背中がジンジンと火照りだした。
 人間の心拍って、こんなに打つものなの? こんなんじゃ、ぶっ壊れるのも時間の問題だよ。
 
 ダスターをパンっと広げて綺麗に畳むほっそりした指は、水の冷たさに負けてぼんのり赤く色づいていた。

 モミジみたい。

 ダメ。笑いが込み上げてくる。
 キョンサイコー。

「な、なに笑ってるのよ」

 俺、バカにされてんのに、全然ムカつかないの。不思議でたまんない。

「ねえ、キョン、早く俺のものになりなよ」

 キョンがほしい。

 はあ? って、崩れた顔すら、可愛く見える。
 今すぐココで、押し倒してもいいじゃんって気すらしてくる。

 俺、ビョーキかもしれない。
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