彼女を10日でオトします
「馬鹿は死んでもなおらないってよく言うけれど、
たすくさん、いっぺん試してみたら?」

「ビョーキはなおるかなあ?」

「え? 死んだら病気も何もないじゃない」

 怪訝な視線を感じる。

 確かにね、死んだらビョーキも何もないよね。だって、煙になっちゃうんだもん。

「でも、俺、ああいうのは、もうこりごりなんだよねぇ」

「え?」

 予想通りのびっくり顔のキョンに笑顔を送る。
 
 これは、嘘じゃない。今まで誰にも言ったことないけど、本当のことなんだ。
 なんで、俺は、今、キョンに言ったんだろう。 

 ……もう1度言ってみようか。

「もうこりごりなの。鋭利な冷たいステンレスがぶちぶちってね、細胞を真っ二つにしていくあの感覚。
だから、キョンのお願いは聞けないなあ」

「べ、別にお願いとかじゃ……」

 キョンは、俯いて、手の中にあるダスターをもじもじともてあそぶ。

「……ごめんなさい。そんなつもりじゃ……」

 眉をひそめて、唇をかむ仕草が可愛すぎる。
 キョンが俺の言葉を待っているのは、わかっているけれど、もう少し見ていたい。
 
 俺って、すんげえタチ悪いね。

 でもさ、言いたくないこと、初めてキョンに言ったんだよ。
 だからさ、もう少し、その顔みせてよ、ね?

 
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