彼女を10日でオトします
 羨ましい? 確かにそう聞こえた。

 聞き返そうと、口を開きかけたとき、
「もう、答えは見つかったんでしょう?
私には、そう見える」
キョンはゆったりとした口調でそう言った。

 そして、微かに笑った。花菖蒲のようなすっくとした涼しい笑顔。

 胸に窮屈さを覚えた。息がつまる。

 キョン、すごいよ。

「うん。俺は俺、なんだって。
病院のベッドで目を覚ましたときに、泣いてくれた人がいたんだ」

 たぶん、俺も笑ってる。
 笑ってると思う。だけど、目頭が熱くなって、喉元がぐっとなって。

 少し、少しだけだよ。泣きそうになっちった。

 だって、キョンが「素敵ね」って、笑ってくれたから。

 
 だけれど、俺の中にひっかかるものがあった。
 キョンが言った「羨ましい」って言葉。

 ねえ、キョンも昔の俺みたいに、迷ってるの?

 キョンがピンチのときには、俺が駆けつけてあげる。
 俺が泣いてあげる。
 あのヒトが俺にそうしてくれたように、俺がそばにいてあげる。

 俺、純粋にそう思ったんだ。
 ……変だよね。  
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