彼女を10日でオトします
 キョンはおもむろに視線を外した。さっきとは、変わらない表情で小さく息を吐いて拳をそっと下ろした。

 カウンターを挟んで、そんなキョンを見ていると、なんて表現したらいいかわからない切なさが、ぐいぐい胸を押し上げてくる。

 たまらず、顔を背けてしまった。

 何でもいいから、俺に声をかけてよ。

 そうしないと、言い訳だって、説明だって出来ないでしょ?

 言い訳? おかしいな。キョンに対して悪いことなんてしてないじゃない。

 説明って何よ? 俺……、何を説明しようとしてるの?

 俺のこと、昔のこと、知ってほしいって思っちゃってるわけ?

 駄目。てんでわからない。
 俺は、何がしたいのよ。

 うずくまって、おもいっきり頭を掻きむしりたい。

 言えるわけないでしょ。

 それでも、キョンなら受け止めてくれるかもしれない、わかってくれるかもしれないと、心の片隅で小さく思っている俺がいる。

 たぶん、言うと思う。

 キョンがもしも、尋ねてきたら……。
 尋ねてきて欲しいとさえ思っている、気がする。
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