彼女を10日でオトします
 キョンは、俺の肩越しにサトミさんを見ていた。凝視。そう形容していいくらいの視線で。

 俺だって、こんな熱い視線浴びたことないのに。たっしー嫉妬しちゃうわよ。

 嫉妬ついでに、俺もキョンの顔、じーっと観察してみることに。

 視点のあわない目は、どこか虚ろで、でも、微かに動いている。
 俺には見えない『数字』とやらを見ているのかしら。

 長い前髪は、緩くウエーブがかかった後ろの艶やかな毛と共に、あれ、何て名称なんだろう、ふわふわしたゴムみたいなもので緩くくくってある。

 余り高くはないけれど、すっと通った鼻。その下の……く、唇!!

 ねえ、やっぱり、キョンちゃん、キス誘ってるでしょ?

 なに、この、「おあずけ」感。つらすぎるんですけどお。

 ちゅーにさえ、なんとかこぎつければ、その後は、なんやかんやでどうにでもなると思うんだけどなあ、なんて。

 不埒な構想をえがいていると、キョンの体がぴくんと小さく跳ねた。

 えー。俺、まだ何もしてないのに。キョンって、見つめられるだけで感じちゃう子なの?

「ごちそうさま」

 後ろからサトミさんの声。
 なあんだ。キョンが必要以上に敏感なわけじゃなくて、サトミさんが立ち上がったから、の「ぴくん」だったのね。

 キョンちゃん、期待させないでよ。そういうプレイがお好みなのかと思っちゃったじゃない。

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