彼女を10日でオトします
 洗面所、鏡の横に置いてあるデジタル時計は、10時ジャストを表示していた。

 猛然とフライパンを叩くお姉ちゃんが頭を過ぎる。

 あんなふうに、勢いづいたお姉ちゃんを止めるスキルは持ち合わせていない。

 歯磨きで口いっぱいになった泡を吐く。ついでにため息も。

 言うこときくしかなさそうね。

 口を濯いで、顔を洗い、お姉ちゃんの部屋に向かった。足が重い。

 嫌な予感がするわ。

「うふふ、響ちゃん。
さあ、お着替えしましょうねえ」

 お姉ちゃんの部屋に入った途端、素早く扉を閉められた。

 二人きりの密室で、怪しく笑うお姉ちゃん。こ、怖い。

「お姉ちゃん、私、今日は占い休みよ……?」

「そんなのわかってるわ。
だからこその、おめかしなんでしょう」

 お姉ちゃんは、クローゼットに頭を突っ込んで、おしりをフリフリ、鼻歌混じりに答えた。

 だからこそって何?
 おめかしなんてする理由ないじゃない。

「うふふ、心配しないで、響ちゃん。
お姉ちゃんの勝負服貸してあげるから。そうね、これがいいわ」

 しょうぶふくう?

 そして、振り向いたお姉ちゃんは、6を頭の上に浮かべ、この上なく楽しそうに顔を歪めていた。

 絶対不吉よ!

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