彼女を10日でオトします
「へえ、俺のこと知ってるんだったら、話は早い。
これから、響子先生は、俺と昼飯食いにいくから」

 私、拒否したの聞こえてました?

「だから、ダメだって言ったじゃない。今日のキョンは俺のなの」

 たすくさん、それもどうかと思うわよ。

「俺のこと知ってんでしょ?
だったら、あんた、引っ込んでた方がいいんじゃねえの」

 アマノさん、凄く嫌な顔。頭の上には、『4』『24』『⑦』。
 親の七光りボウヤなのよね。

「『俺の親父は、区議会議員なんだぞ』ってことかい、天野クン?」

「わかってんじゃん」

「俺、あんまり言いたくないんだよなあ」

 首の後ろを撫でながら、うーん、と唸る戸部たすく。
 下から見る限りじゃ、どうも本気で悩んでいるみたい。

「んだよ、はっきり言えよ」

「キョンを救う為だもんなあ、でもなあ……」

「まどろっこしいな。響子先生、こんなやつほっといて行こうぜ」

 アマノさんが私の腕を再び掴みかけたそのとき。

「しょうがないな、言うよ。
……だから、キョンに触るな」

 脅す、という表現に近い気がした。
 そのくらい、戸部たすくの言葉尻には迫力がこもっていた。

 私の腕を掴み損ねた、アマノさんの右手は宙を泳ぐ。いきなりの命令口調に目をまんまるくしながら。

< 147 / 380 >

この作品をシェア

pagetop