彼女を10日でオトします
「もしもーし。ヒデ?」
 
『あー、ついた?』
 
 携帯の向こう側で女の子が大熱唱。この声は、おそらくコットン。
 おいおい、田舎のプレスリーって……。相変わらず凄い選曲。

「ついた、ついた。部屋どこ?」
 
『今行くから、たすく、そこで待ってて』
 
「ほーい。早く来ないと寂しくて泣いちゃうかんね」
 
『ばーか。勝手に泣いとけ。じゃ、今から行くから』
 
 携帯を切るとすぐにヒデが出てきた。
 
「よお。ひとつ言っとかなきゃなんない事があんだけどさぁ」
 
 と、小声のヒデ。
 
「なに?」
 
「今日は、お持ち帰りすんなよ。あと、メアド交換もナシ」
 
 なにそれー! 何を言い出すのかね、この子は!
 
「合コンの意味ないじゃんか!」
 
 当然、反発する俺。
 
「たすくさあ、B組の安田知ってる?」
 
「まあ、そこそこ。名前番号38番。テニス部所属。親はタクシーのナガシ。最近、大好きだった彼女に振られちゃったって噂の安田くんでしょ?」
 
「そう。さすが“データベース”。んで、その安田を慰める会なのよ、今日。だから、安田に花、持たせてやってよ」
 
「えー。まあ、いいけど」
 
 だから、ヒデとコットンが参加してるのね。つまらない合コン。 


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