彼女を10日でオトします
 急に……どうしたのよ……。

 のどかさんは、こちらに視線を向けながら、手にしていたものをさっとテーブルの下に隠した。

 たすくさんは、ゆったりとした足取りで、私の横をすり抜ける。

「たすくさん……?」

 すれ違いざまに恐る恐る声をかけてみるが、たすくさんには届かなかったようだ。
 たすくさんの視線は、まっすぐのどかさんに注がれている。

「のどか、いま、なにを、かくしたの……?」

 うって変わって優しい声。小さい子供に尋ねるように、一言一言丁寧に発音した。

 緊迫した、と言っていいほどの張り詰めた空気の中で、その声は、妙に浮いていた。

 たすくさんは、座っているのどかさんの前に立って、その膝の上に置かれたものに視線を落とした。

 のどかさんの顔色がみるみる青ざめていくのがわかる。

 『7』。その数字は、のどかさんの頭の上にはっきりと浮かび上がった。
 『恐怖』の暗示。 今、この瞬間、のどかさんは、恐怖を感じているってこと……。

「ねえ、のんちゃん、それ、にいちゃんにも、みせて?」

 たすくさんが、『のんちゃん』と言った瞬間、のどかさんの肩の上で『32』が赤々と点滅し始めた。

 やばい……。『危険』。

「たすくさん!」

 思わず呼んでしまった。
 たすくさんは、上半身を捻りながら、ゆっくりとした仕草で振り向く。
 
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