彼女を10日でオトします
かちゃ、かちゃ、という金属が軽くぶつかる音で目が覚めた。
扉の真ん中、2枚の鉄が合わさった部分に一本光る線。それが途中で途切れている。
誰かが、外に立っている。
ガ、ガーと倉庫内に響く轟音と共に、光の線は徐々に太くなり、その中央に人影が現れた。
逆光の黒いシルエットは、小さな頭から結い下げられた長い髪、膝の丸みがようやく覗く丈のスカート。
キョンだ!
声をかけようか、それとも中に入ってくるまで待つか、考えていると、
「あっ!!」
キョンが、短い悲鳴をあげて倉庫の中につんのめりながら、飛び込んできた。
扉はまるで自動ドアのように、いっきに閉まると開けたときと比べものにならない程の轟音を立てて閉まった。
かちゃ、かちゃ、と世話しない金属音と、閉まったときの衝撃が尾を引いて鉄の扉が低く唸る。
「在原さん、調子乗りすぎぃ」
「ちょっとさあ、ここで反省してなよお」
扉の外には、二人――又は二人以上。この声……。
きゃはは、といたく楽しそうな笑い声が二つ、遠ざかる。
呆然としていたキョンは、短い溜め息をひとつ吐き、扉の取っ手に両手をかけ力を込めた。びくともしない。
あーあ。閉じこめられちゃったねえ。
……キョンちゃんって、なかなか度胸あるわね。こんな状態になってもまったく取り乱さない。
開かないと悟った様子のキョンは、扉にもたれるように立ちすくんだ。