彼女を10日でオトします

１６。６日目

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「キョン、もっとこっちおいで」

　一斉下校によって、酷い混雑のバスの中、たすくさんはそう言って私の腕を引っ張る。

　強引と優しくの中間、微妙な塩梅は、私の思考を停止させる働きが備わっているのではないかと思ってしまう。

　それほど、私はすんなりと引っ張られてしまった。

　私の背骨にベルトの金具があたる。
　鎖骨を包むようにたすくさんの腕が私の肩に回って、はたと気づく。

「くっつきすぎじゃないかしら？」

　上半身を捻ってたすくさんの顔を拝む。

　右手でつり革を掴み、涼しい顔で車窓を眺めていたたすくさんは私と目が合った途端、笑顔になる。
　音をつけるなら、そうね、『ニッ』というぐあいかしら。

「どこがあ？　冬服って分厚くて嫌よね。ジャケットとセーターが邪魔」

　何が言いたいのよ。セーターとジャケットを着なかったら凍えちゃうじゃない。

「んー。俺の言いたいことわからない？
だからさ、夏服だったらさ、お互いシャツだけでしょ。密着度合いが全然違うよね、ってこと。
いっそのこと、全部脱いだってさ、夏だったら寒くないしい」

「全部脱いだら、逮捕されるわよ。どうでもいいから、この腕どかしてください」

　肩にまとわりつく腕を、両手で掴んで剥がそうと力の限り引っ張る。

「やだあ」

　そう言って、一層腕に力を込めるコイツは一体何がしたいのよ。

「こんなに混んでるんだから、キョンちゃん、痴漢に遭っちゃうでしょ!!」

　あんたが痴漢よ!!