彼女を10日でオトします
「あ、キョン、手、大丈夫なの?」

 いきなり、真横にたすくさんの顔が出現。
 普段はすっと上がっている眉尻が思いっきり下がった表情に一瞬たじろぐ。

 きっと、私が両手を使って剥がそうとしていたからだ。

「大丈夫よ。本当になんてことないのよ。
絆創膏だけで充分なのに、貴兄が大袈裟なだけ」

 本当に。

 貴兄は心配性で困る。「手が治るまで俺が体洗ってやる」って言いながらお風呂に入ってきたときには、どうしようかと思ったわ。

 洗面器が貴兄の顔面にクリーンヒットしたお陰で助かったけど。

 貴兄の中で私は、いつまでも子供のままなのよね……。

 絆創膏で充分だって言ってるのに「ヤツに復讐だ」なんて意味不明なことぶつぶつ言いながら包帯でぐるぐる巻きにするし。

「貴史ちゃん……ね。キョンも、貴史ちゃんのこと考えてるときって、そういう顔するんだね」

 たすくさんの表情が何とも言えないものになった。

 苦笑いって言ったら簡単なんだけれど、何だろ……笑顔、そう、笑顔なのに、こう、鼻の付け根にシワを寄せて、歯を食いしばっているような。

 心臓の中心がずんずんする。
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