彼女を10日でオトします
 頬杖をついていた手を伸ばして、私の頭をなでる。
 頭のてっぺんから耳のあたりまで、優しく、けれどもしっかりとなで下ろす。

「俺はね、『いつでも、今が一番幸せと思いなさい』ってある人に教わったの。
でもさあ、ぶっちゃけ、いまいちピンとこないんだよねえ」

 今が、一番、幸せ……?

 たすくさんはわざとらしく肩をすくめた直後、体をテーブルに預けて身を乗り出した。

「だからさ、キョン。
俺と一緒に幸せ探さない?」

 煌く瞳で私を射抜く。
 たすくさんの声が撥(ばち)となったように、私の心臓を叩く。

 ばくん、ばくん。

「幸せ探しキャンペーン~千里の道も一歩から~
先着お一人様限定、たっしーのハグ付き!!」

 たすくさんは、立ち上がった。
 テーブルを半周して、私の横に立つ。

「いかがですか? お客様」

 たすくさんは、右手を差し出す。

 私は無意識に――。



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