彼女を10日でオトします
23
*****
ああ、失敗した。いつもなら、お昼食べて教室に戻るのに、貴兄(たかにい)の顔見てから戻ろうと思ったら、完全に寝過ごしちゃったわ。
ひとつベッドを隔てたカーテンの向こうから、完全に怪しい男女の声が聞こえる。それで声を殺しているつもり? 丸聞こえよ、丸聞こえ!
出るに出られない……。貴兄、早く戻ってきてぇ。
しっかりと確認してから、そういう行為に移ってほしい。……その前に、学校でこんなことしないでよ。こういう事は、ホテルか、自分達の家でやりなさいよね。
欲しいんだったらもっと舌使え、って……保健室で何させてるのよ!!
頭、おかしくなりそう。すっかり激しくなってしまった女の声から逃げるように、かけ布団をすっぽり頭から被った。
まだ聞こえる……。布団の中、人差し指を耳の中に突っ込んでじっ我慢の子。
しばらくすると、ガラガラと扉が開く音がうっすらと聞こえてきた。やっと帰った?
布団から頭を出して、カーテンに手をかけようとしたそのとき、
「はあ、すっきりしたあ。まったく、さよちゃんは我慢できないんだから困っちゃう」
例のベッドから、気の抜けた男の声が聞こえた。口調が全然違う。さっきの男と同一人物!?
困ったのは、私の方よ! 喉元まで出かかった叫びを必死で押し戻す。
うっかり出るところだったわよ。
……まだいたのね。早く帰りなさいよ。
再びガラガラ。扉が開く音。今度こそ貴兄?
すると、一人で喋り出した。変態? もしくは電話しているのかしら? 間延びした独特の口調。
大きな声の独り言(電話?)がようやく終わった頃、しゃっとカーテンが開く音が聞こえた。
……貴兄か思ったら違った。変態男の友達みたい。
溜め息をひとつ。私は、音を立てないように寝返りをうった。
煩い。聞きたくなくても、話し声が耳に入ってくる。これじゃまるで、私が盗み聞きしているみたいじゃない……。
彼女が98人!? と、とんでもない男……。絶対に関わりたくない男№1ね。
「あのねえ、君たち、ココどこかわかってる?」
貴兄の声! やっと戻ってきてくれた! 早く追い返して!