彼女を10日でオトします
「俺はさあ、98人全員に本気なんだけどねえ。まあ、来るもの拒まず、去るもの追わずってな!……俺、今、カッコよかった?」

「自分で言うな。たすくは黙ってれば、多少はカッコイー」

 しゃべらなきゃ俺じゃないしぃ。多少ってのが気になるしぃ。

「琴実、知ってっか? コイツ、喋らなきゃ死んじまう病なんだぜ」

「アホだね」

「うん、アホだ」

 …………。

「アホアホ言うなー! ……本当のこと言われたら傷つくんだぞ」

「あのねえ、君たち、ココどこかわかってる?」

 男にしても低すぎる声が聞こえるやいなや、半開き状態だったベッドを囲うクリーム色のカーテンが一気に開いた。そこに立っていたのは、白衣を着たほんわかした顔立ちの万年好青年。

「やあやあ、貴史ちゃん。居なかったから勝手にベッド使ってまーす」

 俺は、右手を上げて、まずはご挨拶。

「『使ってまーす』じゃないだろう? ここはね、具合が悪い生徒が来る保健室なんだよ」

 溜め息の似合う貴史ちゃん。頑張れ、保健医真田貴史ちゃん!

「うん、知ってる。ここに寝てたら、コットンにヒップドロップくらったんだよねえ。だから、俺、腹イタなのー。イタタタタ」

 俺は、ベッドの上に胡坐をかいた格好で腹を押さえて丸くなる仕草を見せた。ばっちり。

「なあに? たすく、あたしが重いって言いたいわけ?」

 コットンの瞳が怪しく光る。ビームか? ビームが出てくるのか? ギャー! 全然ばっちりじゃなかったあ!

「そうだ、真田センセ。先生も今日の合コン来る?」

 ヒデは、自分が座っていた丸椅子を貴史ちゃんに勧めながら誘う。
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