彼女を10日でオトします
「てっめ――」と立ち上がる荒木薫を手のひらを見せて制した。

「薫さん、ちょっとまって」

 生徒会長は、不適な笑みを浮かべて、私を挑発する。

 望むところよ。そ、そんな、目つきしたって、私は怯まないんですから!!

 目を閉じて、ふう、と息を吐く。
 そしてゆっくりと目を開ける。

 生徒会長の肩口に意識を集中する。

「生徒会長、あなた、2ヶ月後……、2月ね。
2月にあなたが一番苦手とする日、その日、一日、怒りを静めなさい。
そうすれば、きっと、あなたの不安が解消される」

「ふん、この俺に不安などないな」

「それが、愛する人に関係しても……?」

 生徒会長の瞳が僅かに揺れる。

 なるほど、彼女が彼の弱点ね。なかなか可愛いところもあるじゃない。

「彼女も不安を抱えているわ。ふふ、あなたが素直じゃないせいね」

 彼女にも自信がない、と出ているけれど、それは教えてあげない。

「あなたが、その日、一日、怒りを静めれば、彼女の不安も解消されるはずよ。
それに、そうしなければ、彼女はいつかあなたから離れていくわね」

 ぎゅ、っと生徒会長の眉間にしわが寄る。

「……いい加減なことばかり言っていると痛い目に合うぞ」

「そう思うなら、試してみたらいかが?
痛い目にあうのはあなたよ。私の暗示は絶対に外れない」

 生徒会長は、ひとしきり私を睨みつけると、ゆっくりと立ち上がった。

 そして、何も言わずに部屋を出て行った。

「へえ。あんた、なかなかやるな。あのたすくが骨抜きになるのも頷ける」

 そう呟く荒木薫の言葉に返事は出来なかった。
 なんとも言えない疲労感と、安堵で全身の力が抜ける。

 それに、あの眼。

 殺されるかと思った……。
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