彼女を10日でオトします
あるマンションの塀の影で足を抱えて、太陽が昇るのを待った。
雨はまだ止まない。
不思議と寒くは無い。
いんや、もしかしたら寒いのかも。という心の声は奥へ押し込めた。
1年かけて作った出来損ないの人格は肝心なときに役に立たなかった。
犯した罪の気配は、ひっそりと俺の背後をついてきて。
一人になったのを見計らっては、そっと俺の耳元でささやく。「人の幸せを奪ったやつが幸せになるなんて許さない」と。
……もう、何も感じない。
ぐっしょり濡れた制服のカッターシャツが素肌と一体化しようとしてる。
笑える。
なんで俺は、こんなに濡れているんだろう。
そう思った瞬間、頭にあたっていた雨が途絶え、ポ、ポ、ポ、と軽い音が耳に入った。
「た、たすく?」
顔を上げると、待っていた人の顔があった。
その人がさしていたであろう傘が俺の頭上にある。
「だいたい、なんだよ、その格好は」
「制服ですよ、ノリさん」
ノリさんは、俺の顔をじっと見つめて、目を細めた。
「なんて目つきしてんだよ、お前……」