彼女を10日でオトします
 東京駅の総武線快速のホームは、時間が悪かったのか、意外にも乗客が列をなしていた。

 ホームに入ってきた銀色の車両。グリーン車の上階に席をとった。
 たっぷり2時間半、電車に揺られるのだ。

 千葉県内に入り、もぐらみたいに地面の下を這っていた車両は、地上へ。
 だんだんとビルがなくなり、空が広くなる。

 雨は上がっていた。

 茶色い土がむき出しの畑が多くなり、緑が増え、人と鳥は電線によって住む世界が別けられる。

 あれから1年と10ヶ月経った。
 変わってるかな。

 変わってるわけないか。

 一度乗換えをして、降り立ったのは、保田駅。

 ばあちゃんがいた町。
 1年間、リセットするために暮らした町。

『たすくは、たすくでいなさいな』

 ばあちゃん声が聞こえた気がした。

 その意味がわからなかった俺は、その言葉を無視して必死に生まれ変わろうとした。
 1年間かけて、自分の中に作った『能天気』な人格は、ただのメッキだったとは気づかずに。

 風にのってうっすらと潮の香りがする。

 

 
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