彼女を10日でオトします
「キョン……俺のこと、好きなの?」

 えっと……。
 あまりに、成り行きに沿いすぎた展開で。
 事務処理並みに、大真面目な口調になってしまって。

「うるさいわね!!
そういうことを訊き返すのってどうかと思うけど!?
察しなさいよ!」

 ……否定しない?

 あれ?
 すごく、すごく、望んでいたことなのに、実感がわかない。
 こうなることを毎晩のように思い描いていたのに、でもそれと同時にまさかこんなふうになるなんて思っても見なかった。

 だから。

「キョン、俺のこと『あなた』って言ったね?」

「い゛……言ってません」

「嘘つき」

 だから、俺は、キョンの唇に俺のそれを重ねた。

 実感したくて。
 キョンを実感してくて。

「キョン、舌、絡めなきゃだめ、でしょ?」

 大人しく目を閉じているキョンにどうしたらいいかわからなくなって、叩いた軽口は、笑っちゃうくらい震えていた。

 今まで数え切れないくらいしてきたキスとは、何もかも違う感覚と感情。

 ……これが、俺の初めてのキス、と決めた。
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