彼女を10日でオトします



「ここね、俺のばあちゃんの墓なんだ」

 頭が真っ白になるくらい唇を重ね合わせた後、水平線を見ながら告げた。
 キョンの鎖骨の前で腕を組む。

「おばあさん?」

 俺の両膝の間に座っているキョンは、顔を斜め後ろ、俺に向けた。

「そ。俺と親父しか知らないはずなんだけど……。
なんでキョン、ここに俺がいるってわかったの?」

 キョンは、目を細めるようにして微笑むと、顔を正面に戻した。
 真っ黒で長い髪、俺の腕で押さえられた肩から下が風に舞う。

「たすくさんのお父さんに聞いたの。
というか、元は私があなたのお父さんに教えた」

「え?」

 キョンが親父に教えた? ここを?

「私が中2のとき、あなたのお父さんが私のところに来たの、知ってた?」

「……いいや。中2って言ったら、俺、悪いことしてて家に帰ってなかったもん。
知るわけない」

『お姉ちゃんのところ』じゃなくて、『私のところ』、か。
 ということは、キョンが何かを占ったってことなのかな。親父の何か。

「悪いこと、ねえ」

 と、キョン。独り言みたいに呟いた。

「悪いこと。かおるんのツテでさ、ヤクザに頼み込んで体に悪いクスリを受注してたの」

「腑に落ちないわ。中学生にそんな役、普通任せる?」

 お。正論。

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