彼女を10日でオトします

 あれはまだ、自分の事を『僕』と呼んでいた頃。
 母親は、言わば教育ママってやつで、俺は中学受験に備えて毎日塾に通ってた。

 親父は、ほとんど家に帰ってこなかったし。俺には母親しかいなかった。
 必死で塾に通ってたよ。

 友達と遊びたい。ゲームしたい。本を読みたい。全部我慢してさ。

 ガキながら、母親に褒められたい一心で。

 神様のイタズラってやつなのかな。
 その日、俺は、急に体調を崩して塾を早退したんだ。

 鍵を開けて玄関に入ると、様子が違う。
 嫌な感じ。言葉じゃ表現できない。

 ほら、うちの実家の廊下って長いじゃん?
 あれがさ、もっと長く感じるんだよ。
 俺が入ってくるのを拒んでるってかんじ。

 居間に近づくとさ、変な声が聞こえるわけ。
 気持ち悪い、寒気がする声。

 このへんでさ、なんとなぁくわかるわけよ。
 小6つったって、それくらいの知識、ぼやーっと知ってる。

 居間の閉まった扉の前に立って、ふつふつと怒りが湧いてきた。
 俺がひっしこいて、勉強してるのは、何のためなんだよって。

 俺に塾通わせてんのは、こういうことする為の時間作ってるだけかって。 

 扉を開けると、さっきまで「お母さん」って呼んでいたはずの女と川原っていう若い秘書が絡み合ってた。

 全裸。

 もうさ、「お母さん」じゃなくて、ただの獣だった。

< 351 / 380 >

この作品をシェア

pagetop