彼女を10日でオトします
 そもそも、『キョンが俺の数字だけ見えない』に何か理由がある、ということに対して根拠がない。

 理由なんて何もないかもしれない。

 ただ、なんとなく、見えないだけ、ということだって充分可能性はある。

 だから、キョン。

 キョンの占いが外れたとは言い切れないんだ。

 キョンが見えないだけで、もしかしたら、俺の上には、あの時のまま『11』が浮遊しているかもしれない。

 そして、まだ“その時”が訪れていないから、俺は死んでいないだけかもしれない。

 “その時”が来たら俺は――

「……くさん、たすくさん? どうしたの?」

 キョンの問いかけに、我に返ると、首を捻って俺の目をのぞきこんでいた。

「い、いや、なんでもないよん。
キョンの占いが外れてラッキーだったなあって思ってただけえ」

 キョンだって、気づいてるでしょ?

 だけど、キョンは言わない。言えないのかもしれない。

 言葉ってもんは、魔力がある。
 言ってしまえば、その途端、それが本物になってしまうかもしれない。

 占いをしてきたキョンなら、言葉の怖さを知ってるはず。
 だから、きっと、キョンは『11』が見えたとき、占わないんだ。
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