彼女を10日でオトします
 赤信号に掴まって立ち止まっていると、携帯電話が右けつで震えた。

「キョン、ちょっとごめんね」

 手を離して携帯を取り出し、開く。

「コットンだ」

「琴実さん?」

「うん」

 ディスプレイには、川原琴実の表示。通話ボタンを押した。

「はいはい。こちらたっしー。只今お取り込み中の為」

『たすく!? あんた、今どこ!?』

「んー? 中野通り。それよか、コットン、具合は」

『お兄ちゃんがいなくなった!!』

「は?」

『まだ目を覚ましてないと思ってたんだけど!
警察の人の目を盗んでいなくなっちゃったのよ!!』

 横断歩道をニッサンの軽が横切る。
 その向こうに、見覚えのある男。

「琴実……ほんとだ」

 母親を寝取った男――川原が立っていた。



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