彼女を10日でオトします
『ほんとだ、って……。
まさか、たすく――』

 感づいたっぽい、琴実の言葉を遮る。
 横断歩道の向こうに立つ男、川原は、まっすぐ俺だけを見つめる。
 信号は、まだ、赤。

「いいか、琴実、お前、そこにいろ。
それから、ヒデと薫もそこに呼べ」

『たす――』

 信号が青に変わった。
 川原がニヤリと唇の端をあげた。

「琴実、頼んだぞ」

 ホールド。

「たすくさん……?」

 キョンが、眉尻を下げて憂色が漂う瞳を俺に預ける。
 俺は、そんなキョンを一瞥するも、目線を前に戻さずにはいられなかった。

 川原が歩いてくる。

「ちょっと、急用ができた。
『メロディ』で待ってて。迎えに行くから」

「え? どうし――」

「早く。説明してる暇はないん……」

 目の前で川原が立ち止まった。 

「かわいいお嬢さんだね。
彼女かい? 坊ちゃん」

 川原圭吾……。
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