彼女を10日でオトします

「川原さん、俺、温かいもんでも買ってきますよ」

 公園の入り口で止まって、中で待っててください、と告げる。

 何とかしてキョンを逃がさなきゃ。

「いいよ。気を使わないで」

「や、俺、喉渇いちゃったんで。キョン、おいで」

 キョンの手を引いたところで「私が行くよ」と川原さんが俺を制した。

「私が、君を誘ったんだし。
それに、坊ちゃんにお遣いを頼むのは忍びない」

 坊ちゃん……。元秘書の性か?
 どうする。
 川原は、逃げる可能性だってある。
 いや、いっそ、逃げてくれた方がこっちは動きやすい。

「わかりました。お願いします」

 病院から抜け出して来た川原は所持金がないはず、と財布から千円札を二枚抜き取り、川原に渡した。

「借りるよ」

 そう一言、川原は言い、俺達に背を向けた。

 それだけあれば、タクシーに乗れるだろ。

 タクシー料金、2千円でいける距離。頭の中でざっと計算する。

 帰ってきたら、直々に対峙して決着をつける。
 もし、帰ってこなかったら、今度こそ、刑務所だ。
 

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