彼女を10日でオトします

 ちょうど隙間の時間なのか、公園の中は閑散としていた。

 手近なベンチに座って、キョンを隣に招く。

「キョン、『メロディ』に――」

「ねえ、さっきの人、誰?」

 言えない、で収まるような雰囲気では無かった。
 キョンは、身を乗り出して、鼻と鼻がくっつきそうな勢い。

「コットンの兄貴で、元親父の秘書」

「あの人が例の……」

 たすくさんのお母さんを……と考えているのがありありとわかる、キョンの怪訝な表情。

「だから、キョン、『メロディ』に――」

「嫌よ」

 予想はしていた。キョンは一度下した決断をそうそう変える子じゃない。
 それでも、俺は頭を掻いた。
 こればっかりは、変えてもらう他ない。

「キョン、わからないこと言わないで、ね?」

「嫌よ。あの人、すごい嫌な数字が出ていたわ。心配よ」

 キョンは眉根を寄せる。

 嫌な数字……。

「だったら、なおさらだ。響子、帰れ」

 お願いだよ、キョン。
 わざと口調を変えて、鋭い視線を送る。

「嫌って言ってるでしょ」

 キョンも負けじと俺を睨み上げる。

 一陣の風。

「はあ……。キョン、俺を困らせないで」

「わかった。譲歩、するわ。
私の代わりにヒデさんと薫さんをここへ呼んで頂戴」

 ヒデとかおるん……

「わかった」
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