彼女を10日でオトします
「はい、坊ちゃんは、ココアがお好きでしたよね。
お嬢ちゃんも同じで」
川原は、俺とキョンにひとつずつ缶を渡す。
ホット缶なら砂糖微量コーヒーを選ぶようになった、という成長は川原は知らなくて当然。
こいつの中の俺は、中学受験に奮闘する小学生、はたまた、復讐に駆られた中学生のままのはず。
「どうぞ」
俺は、キョンとの距離を詰めて、川原が座れる場所をあけた。
「いいえ。ここで結構」
頬を緩ませながら、自分の分の缶コーヒーを開けた。
ベンチに座っている俺を見下ろす。
堪らず、俺も立ち上がった。
右手の缶ココアを半回転。3回。
……落ち着かない。
「で、話ってなんです?
あ、まさか、あの女、死にました?」
ふ、と鼻を鳴らす川原。それから、缶の口に唇を寄せて、喉を鳴らした。
「生きてるよ。
私みたいに眠りこけているふりをしてなかったならば、今朝目を覚ました」
ふり……。
なぜ?
「甘くなったね、坊ちゃんは」
川原の口元から笑みが消えた。
「何が言いたい」
「君の復讐は、最高の出来だったよ。
私は、君からシャブが流れてきていることには気づかなかった。
自ら、それを求めていたようにさえ感じていた」
「だから?」
思わず、早口になる。
奥歯を噛み締めると、ギリリという不快な音が頭に響いた。
「あの時の君だったら、こんなミスは犯さなかっただろうね」
川原の顔が不気味に歪んだ。
お嬢ちゃんも同じで」
川原は、俺とキョンにひとつずつ缶を渡す。
ホット缶なら砂糖微量コーヒーを選ぶようになった、という成長は川原は知らなくて当然。
こいつの中の俺は、中学受験に奮闘する小学生、はたまた、復讐に駆られた中学生のままのはず。
「どうぞ」
俺は、キョンとの距離を詰めて、川原が座れる場所をあけた。
「いいえ。ここで結構」
頬を緩ませながら、自分の分の缶コーヒーを開けた。
ベンチに座っている俺を見下ろす。
堪らず、俺も立ち上がった。
右手の缶ココアを半回転。3回。
……落ち着かない。
「で、話ってなんです?
あ、まさか、あの女、死にました?」
ふ、と鼻を鳴らす川原。それから、缶の口に唇を寄せて、喉を鳴らした。
「生きてるよ。
私みたいに眠りこけているふりをしてなかったならば、今朝目を覚ました」
ふり……。
なぜ?
「甘くなったね、坊ちゃんは」
川原の口元から笑みが消えた。
「何が言いたい」
「君の復讐は、最高の出来だったよ。
私は、君からシャブが流れてきていることには気づかなかった。
自ら、それを求めていたようにさえ感じていた」
「だから?」
思わず、早口になる。
奥歯を噛み締めると、ギリリという不快な音が頭に響いた。
「あの時の君だったら、こんなミスは犯さなかっただろうね」
川原の顔が不気味に歪んだ。