彼女を10日でオトします
「死ぬより辛いんだよ!!」

 川原は後ろに隠していた手を前に突き出す。
 咄嗟にキョンの腕を掴んでいた手を、俺の体の後ろに引く。
 と、同時に。
 その反動で自分の体が、キョンがいた場所に移動した。

 川原の拳からはみ出た、黄色い柄。

 鈍く輝く薄い刃。そこに等間隔に、斜に入った浅い溝。

 カッター。

 時間を引き延ばしたみたいだ。
 視界に入る全てがスローモーション。

 わき腹に衝撃が突き抜けた。

 自分の体がくの字に曲がっていることはわかった。
 衝撃を受けたまま、後ろのベンチの上で尻が2度跳ねたこともわかった。

 わき腹の感覚は判然としない。

 熱いのか、冷たいのか、痛いのか、その全てが気のせいなのか。

 あの時と同じ感覚だ。

 あの時と――

 
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