彼女を10日でオトします
 お姉ちゃんから離れた戸部たすくは、なんと、私の脇に腕を差し込んできた。ぐっと上に持ち上げられて……なぜか、立たされてしまった。

「キョン、明日からよろしくね」

 顔が近い。戸部たすくは、腰を屈めて私の瞳をじっと覗き込む。

「離れてください」

 私は、渾身の力を声に込めた。さらに精一杯睨んだ。

「いいねえ、その目。ゾクゾクしちゃう。
あ、キョン、俺と付き合わない?」

 つ、付け足した!!
 信じられない!

 普通は、ドキドキしながらとか、精一杯言わなきゃいけないセリフをさらっと付け足しやがった!!

「しっ、死んでも嫌です!!あなたなんかお断りよ!」

「あーあ。駄目でしょ、キョン? 俺のこと『あなた』なんて呼んだら」

 目の前の男は、これ見よがしに肩をすくめる。何なの、コイツ。

 戸部たすくは、ひとしきり私の睨みを真顔で受けると、くるりと背中を向けて右手を高々と上げた。

「宣誓! 俺、戸部たすくは、10日でキョンをオトします!」

 はあ!?

 顔だけ振り向いた戸部たすくは「ね?」と、私に無邪気な笑顔を投げかけた。



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