彼女を10日でオトします
 階段を登っていると、HRの終わりを告げるチャイムが鳴った。
 
 おっと、急がないと。行き違いになったら困るかんね。

 2段飛ばしで階段を登り終えると、その真向かいが2のBの教室。

 まだ、HRは終わっていないらしく、しんとした教室に、担任の声が響いていた。

 後ろの扉の小窓から中を覗くと、一人の女の子が俺に気づいて手を振ってきた。さくらちゃん。
 いいのかねえ。先生に怒られちゃうぞ。

 俺も一応、手を振ってにっこりする。

 ほーら、さくらちゃん怒られた。でも、さくらちゃんは、てんで気にしている様子もなく、相変わらず俺を見てにっこり。もう一度、俺もにっこり。

 さて。キョンはどーこだ?

 うーん。後ろからじゃわからないなあ。

 まあ、しかし、この中にいることは確かだし。



 ながーい長い説教じみた話も終わり、B組の皆の礼を見届けて、俺はB組に乗り込んだ。

「たすくー。どうしたの? 一緒に帰ろ」

 B組でキョロキョロする俺の腕を掴んで話しかけてきたのは、例のさくらちゃん……ではなくて、ゆっこちゃん。

「うーん、ごめんねぇ。今日はだめー。というか、たぶん、しばらく駄目かな」

「えー、なんでなんで?」

 掴んだ俺の腕、ぶんぶん振らないで。

「なんでもぉ。そうそう、ゆっこちゃん。キョ……じゃなくて、在原響子ちゃんってどのこ?」

「え!? 在原さん? ぇえ!? なんでたすくが在原さん?」

 ゆっこちゃん、驚きすぎ。ゆっこちゃんは、俺の腕をぴたっと止めて、付け睫毛でばっちり囲った目を見開いた。

 なんでって、そりゃあ――

「響子ちゃんかわいいじゃん。早く教えて?」

「あははは! たすく、目ぇおかしくなっちゃったんじゃん? 在原さんがかわいいなんて……」

 感じわるぅ。

「ねえ、早く教えてよ」
 
 
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