彼女を10日でオトします
 うう。さむ。
 正門を出ると、また違った種類の冷たさを含んだ風が俺に激突してくる。
 
 セーターの袖を伸ばして、そこに、小さく畳んだ指を隠す。ついでにポケットにねじ込む。完璧。
 ……でもないのよね、首が寒い。

 あ、鞄、忘れた。教室に置きっぱなしだわ。
 まあ、いっか。財布と携帯はケツポッケにインしてあるし。 
 どうせ鞄には、シャーペンと消しゴムと3色ボールペンしか入ってないんだから。

 真昼の歩道は、奥様たちが跨いだ自転車がびゅんびゅん。
 そんな暴走自転車がバス停に立つ俺を危なっかしくすり抜ける。
 
 あれじゃ、自転車の後ろに積まれたちっちゃな子供がかわいそうよね。
 幼稚園の指定帽に結ばれた紺のリボンが、すっごい勢いでハタハタしてる。

 5分も待っているとバスが来た。
 中学、最後の1年間だけいた、ド田舎じゃこうはいかないわね。
 1日に5本しか来ないんだもん。バス。

 バスの中は、そこそこ人がいた。俺は一番後ろの席に座る。背もたれの綿がちょうど良くつぶれていて、良い硬さ。

 これから、アパートに帰って、ちょっと寝て。それから、ヒデとコットン(カップル)が参加する不思議な合コンに行く。

 変なの。あーあ、ミーナちゃんとデートだったのに。
< 7 / 380 >

この作品をシェア

pagetop