彼女を10日でオトします
「と、戸部さん……!?」

 トイレマットの上で、キョンは膝を抱えて座っていた。

 目を丸くして、俺の顔を見上げるキョン。頬には、涙の筋がてらてらと光っている。

 やっぱり泣いてた。つうか、俺が泣かせたんじゃん。

「女の子がひとりで泣いちゃだめでしょ?」

 なぁに言ってんのよ、俺。

 気の利いた言葉が出ず、もどかしくて、頭をガシガシかいた。

「……変態」

とキョン。俯いてボソッと呟いた。

 まあ、そうだわね。女の子が入ってるトイレの鍵、こじ開けて押し入ってるわけだし。

「はは、よく言われるう。
ほーら、立った、立ったあ」

 座っているキョンを抱き起こして。
 ……うん、この際、ドア閉めちゃえ。

 後ろ手でトイレのドアをバタン。

「ちょっ……、戸部さん、何して――」
 
「うーん、わかんないかなぁ?
俺とキョン、トイレットでふたりっきりの巻ぃ」

「ばっかじゃないの!? ちょっと離してよ」

「いやん。離したらキョン、逃げちゃうもん」

「当たり前よ!」


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