彼女を10日でオトします
「じゃあ、俺は、貴史ちゃんとこに行こうっと」

 そう言って、足早に2のBを後にした戸部たすく。
 貴兄のところって、保健室? 自分の教室に行きなさいよ。

 戸部たすくがいなくなった教室。コソコソと話す声が一際大きくなった。
 ああもう、聞こえてるわよ。影で悪口言うくらいなら、堂々と言えばいいじゃない。

 溜め息をひとつ残して、クラスの女子からの突き刺さる視線を背中に受けながら、廊下に出た。

 なんでこんなことになっちゃったのよ。せっかく誰にも関わらないように大人しくしてたのに。

 階段に足をかけたそのとき、左腕を強く引っ張られた。
 
 よろけた私の身体を右から押される。

 気づいたら、私は階段の下にいて、目の前には……確か、春っぽい名前の子と、ええと、冬っぽい名前の子だったかしら? クラスで見たことがある女子二人が仁王立ちしていた。

「在原さん、どうしてこんなとことにいるのよ?」

 はい? この子、頭大丈夫かしら?

「どうしてって、これから化学室にいくところだったのよ。その後は、あなた達にここにひっぱりこまれたわけだけど」

「そうじゃなくて! 在原さんの下駄箱に紙いれておいたじゃない」

と、春っぽい名前の子。

 下駄箱? 紙?

「そうよ! この休み時間に裏庭に来いって書いてあったでしょ?」

続いて、冬っぽい名前の子。

 ああ、あの、ノートの端をちぎったようなアレね。

「ごめんなさい。ゴミだと思って見ないで捨てちゃったわ」
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