彼女を10日でオトします
 戸部たすくが涙を溜めて見たその先で、琴実さんは、身体をくの字にまげて必死に笑いを耐えている様子。

 その姿を不思議に思いながら、落ちた教科書とノートを拾っていると、ざわつきが教室にせまってきた。

「みんな帰ってきたみたいね」

 琴実さんは咳払いをしてそう言うと、教室は、一気に騒がしくなった。

「やっとお昼かあ」

 目の前でぐうっと伸びをする戸部たすくの横にしゃがんで、教科書とノートを机の中にやっと収める。

「キョンは、貴史ちゃんのとこで食べるの?」

 上から、悲しくも聞きなれてしまった声がふってくる。

 ……こいつは、どうして、私の行動を把握してるのよ。

「そうだけど」

という私の返事の『け』のあたりで戸部たすくは被せて

「じゃあ、今日はみんなで、貴史ちゃんとこで食べよー」

などと、はた迷惑な提案を。

「それいいねぇ。じゃあ、ヒデに電話しなくちゃ」

 ヒデ? 誰よ、それ?

 携帯電話をブレザーから取り出す琴実さんの前に手を突きだす戸部たすく。

「ヒデには、もう俺が電話しといたから、だいじょーぶ」

 こいつは、何でも自分の思ったとおりになると思っているのかしら。 

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