【短】隣のカノジョ
「……あ、待てよ」
ふと、ある記憶が俺の脳裏に思い出された。
遥に「好きな人がいる」と言われた日の帰りのことだ。
遥の家の方面に向かうバスが遅れていて、一緒にベンチに座って待っていたとき。
「……遥?」
「んー……。ちょっと、飲みすぎた」
コテン、と俺の肩に、遥が頭を預けた。
あの量で酔ったのかと、驚いたのを覚えてる。
今考えたら、遥が俺にあんな行動することなんてなかったよな。
ちょっとだけ、可愛いやつだなと……思ったような、思わなかったような。
あれがもし、遥が意図してやってたんだとしたら。
「うわ〜……、ダメだ。こんな悩むとか似合わねー」
頭をガシガシかいて、また大きく息を吐く。