きみが泣いたら、愛してあげる。
10.指輪か花束か
10.指輪か花束か
○杏花のオフィス(夜)
就業時間を過ぎても、後輩のミスの修正を手伝うために残業している杏花。
やっとの思いで仕事を終わらせ、時計を見るともう9時を回っていた。
後輩「本当にありがとうございました!
こんな時間まで手伝わせてしまって本当にすみません!」
杏花「いいよ、気にしないで」
必死に謝る後輩に笑う杏花。
疲れたなあ、と思いながら外に出ると、そこには杏花を待っていた圭が。
杏花に気付いて、嬉しそうに笑う圭。
杏花「来てたの!?連絡してくれれば今日は残業だって言ったのに…
いつから待ってたのよ」
圭「んー、今日はどうしても会いたかったから」
杏花「なんで…」
圭「…まあいいや、今9時過ぎかぁ。
ぎりぎり間に合うから急ごうか。杏花さんお腹すいてる?」
杏花「そりゃあお腹はすいてるけど…」
戸惑う杏花を強引にタクシーに乗せる圭。
よく見ると圭は珍しくきっちりしたスーツを着ている。
○高級レストラン(夜)
なんだか高そうなレストランに来た二人。
店員「永瀬様、ご無沙汰しております。お待ちしておりました」
圭「すみません、遅くなっちゃって」
店員「永瀬様のためなら問題ありません」
店員との親しげな会話を聞いて、この高そうなレストランに行き着けなのか、と驚く杏花。
(やっぱり社長の息子なんだなぁ)
夜景の見えるレストランで、メニューを見ながら杏花がコソコソと耳打ちする。
杏花「私こんなにお金持ってないよ!?」
圭「今日は俺の奢りなんで」
杏花「学生に払わせられないよ!」
圭「いや、今日だけは奢られてください」
戸惑いながらも美味しいコース料理を食べる杏花のもとに、「happy birthday」と書かれたデザートが運ばれてくる。
杏花「え…あっ!」
モノローグ(最近色々ありすぎて忘れてたけど、私、今日誕生日なんだっけ!?)
圭「はは、本当に忘れてたの?」
杏花「ありがとう…嬉しい」
圭「ん、どういたしまして」
スッと小さな箱を取り出す圭。
圭「杏花さん、これプレゼント」
圭から渡されたのは指輪。
驚いて目を見張る杏花。
杏花「待って、こんなのもらえな…」
圭「俺と結婚してほしい。
本物の婚約指輪とかそんなのじゃないけど、渡したくて」
杏花「でも…」
本物じゃないと言っても十分高級そうな指輪に戸惑う杏花。
圭「もっとゆっくり考えてから答えを出してくれていいし、ただのプレゼントだと思って受け取ってよ」
圭モノローグ(元彼に貰ったネックレスなんか早く忘れてほしいし、ね)
○杏花の家の前
部屋の前まで送るとタクシーで送ってくれた圭と、部屋まで歩く。
圭「今日は急にごめん」
杏花「いやいや、本当にありがとう!
誕生日なの忘れてたからすっごく嬉しかった!」
大輔「……あ、」
部屋の前に着くと、花束を持った大輔が待っていた。驚く杏花と、気まずそうに目をそらす大輔。
大輔「…ごめん、どうしても、渡したくて」
杏花「お花…」
赤いバラの花束を受け取って、困った顔をする杏花。
大輔「誕生日おめでとう。
邪魔して悪かったな、おやすみ」
ぽん、と杏花の頭を撫でて去っていく大輔。
困り顔の杏花。
杏花モノローグ(付き合ってる時は、花束なんてくれたことなかったくせに…)