きみが泣いたら、愛してあげる。
12.いつか枯れるもの、永遠にきらめくもの
12.いつか枯れるもの、永遠にきらめくもの
○杏花の部屋(日曜の夕方)
ぼーっとしながらソファーに寝っ転がる杏花。
圭は、1年間留学に行く。
圭は、もともとずっと好きだった人がいた。
それは私と出会う前からで、つまりその好きな人は私ではなくて。
それなのにどうして、なんで……。
圭との今までのことを思い出す。
『お姉さん、俺と結婚してくれませんか?』
あの時の圭の言葉はなんだったんだろう。
どうして私と結婚したいなんて言うんだろう。
杏花「意味わかんない…」
と、大輔からメッセージが来る。
『大輔:飲みに行かない?』
○居酒屋(夜)
昔2人でよく来ていた居酒屋で向かい合ってお酒を飲む2人。
楽しそうに笑顔で話す。
杏花「そうそう、あの時ミキがさぁ」
大輔「懐かしいな、あれ本当に面白かったよな」
杏花モノローグ(大輔とは話も合う。一緒にいて楽しいし、落ち着く。伊達に何年も付き合ってきたわけじゃない。だけど…)
大輔が女の子と会社を出てきた時のことを思い出す。
『…悪い、この子のことが好きになった』
(そう言われた時、ショックだった。
ショックだったけど私、どれくらい悲しかったっけ?)
『いつもそうだよな。杏花は俺がいなくても平気なんだろ』
(…うん、きっと平気だった)
『俺のこと、必要としてないんだろうなってずっと思ってたよ。1人で生きていけそうだもんな』
(いなくたって、生きていけた)
(大学生の頃、私は確かに大輔のことが好きで。
そして大輔も私のことが好きだった。
それでも時間が経てばキラキラしていたものは見慣れて当たり前になって、時には邪魔に感じることすらあって。
「大輔と結婚したい!」って当時の私は思っていた。
だけど最近は、「大輔と結婚するんだろうな」って、それで本当にいいのかなって、どこか思っている自分がいた)
大輔「…杏花、なんか元気なくない?」
杏花「え…」
大輔「何かあった?」
杏花「あ……いや、何でもない」
杏花(気付いて、くれるんだ。
そういうところが好きだったんだよなぁ…。
大輔のことが好きだった。
それは全く嘘ではないけれど)
杏花のスマホにメッセージが届く。
メッセージ『永瀬 圭:昨日はUSB届けてくれてありがとう。お礼遅くなってごめん。忙しい中ありがとう、助かった』
杏花(留学のことは、触れてないか)
大輔「…どうした?嬉しそうな顔して」
杏花「え?」
自分でも気づかないうちににやけていた杏花。
○杏花の部屋の玄関
指輪のケースと、並んだバラの花。
赤いバラは時間が経って少し色褪せて、しおれている。
(大輔とやり直したほうがいいのかもしれないって、思うこともある。
それでも私が今日1番嬉しかったのは、
圭くんからメッセージが来たことだった。)