きみが泣いたら、愛してあげる。
13.夢物語と現実世界
13.夢物語と現実世界
○カフェ・昼休み
ユリナと2人でランチを食べながら圭達とのことを相談する杏花。
ユリナ「うーん、まあ、この前は面白いから圭くんと付き合えばって言ったけど、現実的に考えたら大輔にした方がいいのかもねぇ」
杏花「やっぱりそうかな」
ユリナ「だって大学生と社会人で、これから1年留学するって、絶対うまくいかないよ」
杏花「それはそうだよね…」
杏花モノローグ(1年の遠距離恋愛なんてただでさえ難しいのに、社会人と大学生なんてうまくいくわけないよね。)
ユリナ「まあ、大輔も浮気したわけだし許せるなら、だけどね。杏花の気持ちとしてはどっちが好きなの?」
杏花(私の、気持ち…)
杏花「…でも、気持ちだけでどうにか突っ走れるほどもう子供じゃないし、結婚だってあるし、現実的に考えた方がいいよなって思うよ」
ユリナ「難しいねぇ…」
杏花モノローグ(もしも私が大学生だったら、何も迷わずに彼のところに走っていけたのかもしれないな)
○杏花の家(夜)
テレビを見ていた杏花のスマホにメッセージが届く。
メッセージ『永瀬 圭:今家の近くにいるんですけど、ちょっとだけ会えませんか?』
思わず頬が緩んでしまう杏花。
慌てて髪を整えて外に出ようとすると、チャイムが鳴る。
圭「ごめん、夜遅くに」
杏花「ううん、どうしたの?」
圭「USB届けてもらったお礼にタルト買って来たんで、一緒に食べようかなーと思って」
にっこり笑う圭に、つられて笑う。
杏花モノローグ(だめだなぁ、この笑顔に弱いかもしれない)
玄関に入って、圭は指輪に目を向ける。
玄関には指輪のケースが飾ってある。
赤いバラは枯れてしまったので飾られていない。
圭「…指輪、飾ってくれてたんだ」
杏花「あ、それ…は」
圭「杏花さん、やっぱり俺のこと」
少し近づくと、少し後ずさる杏花。
逃さないように腰に手を回して顔を近づける圭。
圭「好きなんじゃないの?」
少し焦ったような、切なさに揺れる瞳に動揺する杏花。
杏花「ほ、本気じゃないならそういうこと言わないで」
圭「え…」
杏花「…本気じゃない、くせに」
困ったような顔をする圭。
杏花も黙って目をそらす。
圭「…留学のこと、聞いたんですよね」
杏花「留学するなら、1年会えなくなるってことでしょう。
それに、前の彼女が言ってた「好きな人」っていうのだって、私と出会う前の話だから私じゃないのに…。
それなのにどうして私と結婚したいなんて言えるの」
圭「…その話は、半分本当で、半分勘違いです」