きみが泣いたら、愛してあげる。
15.赤いバラは記憶の中で
15.赤いバラは記憶の中で
○カフェ(日曜の昼)
大輔を呼び出した杏花。
ふたり、カフェでアイスコーヒーを飲みながら話す。
杏花「ごめん、大輔とはやり直せない」
大輔「……」
杏花「圭君のこと好きなの」
大輔「……まあ、そんな気はしてた。あの子と付き合うの?」
杏花「付き合わないよ」
大輔「なんで?」
杏花「…現実的に考えて無理だと思うから。うまくいくわけないんだ」
大輔「ふーん…」
ふたりで昔の思い出話をする。
大学生の時の出会いや好きになったきっかけ、初めてのデート、だんだんお互いがいることが当たり前になって心が離れてしまった回想。
大輔「…で、圭くんだっけ?も振って、杏花はそれでいいのか?」
杏花「…いいも何も、そうするしかない…」
杏花モノローグ(前みたいに、なんとなく大輔と結婚するつもりでいた私にはもう戻れない。)
大輔の会社の前で浮気がわかった日のこと、圭が声をかけてくれた時のことを思い出す。
杏花モノローグ(だからといって、大学生の彼と1年の遠距離恋愛なんて大変なのは目に見えてる。年下の彼にとって魅力的な女の子なんてきっとたくさんいて、私はその子たちに勝てるようなものは何もなくて。)
頬をそっと撫でる圭の癖、圭のことがまだ好きそうな実晴のことを思い出す。
杏花モノローグ(だからといって、私のために圭くんの留学を止めるだなんて、もってのほかだ。)
留学をやめてもいいと言った圭のことを思い出す。
大輔「…そっか。まあ、杏花が決めたことなら。
今までありがとう。好きだったよ
それから、たくさん傷つけてごめん。本当に後悔してる」
杏花「私も好きだったよ。私こそ、ちゃんと愛せなくてごめん」
大輔「…幸せになろうな、お互いに」
杏花「うん。さよなら」
杏花そう言って席を立つ。
大輔はまだカフェに残るようだ。
大輔「…そうだ、杏花」
杏花「え?」
大輔「杏花は本当は、欲しいものを裸足で追いかけてつかめるような、そんな女の子だと思うよ」
杏花「…」
杏花はふっと微笑んで大輔に手を振る。
大輔も優しく笑って杏花の背中を見送る。
杏花が見えなくなってから、一筋の涙が大輔の頬を伝う。
大輔(馬鹿だなぁ、俺は)
○カフェの外(夕方)
杏花「これでいいんだよね…」
意を決したようにスマホで電話を掛ける。
発信先は『永瀬 圭』
圭『もしもし』
杏花『圭くん、話したいことがあるの』