きみが泣いたら、愛してあげる。
17.夜街リグレット

17.夜街リグレット



○居酒屋(夜)


ユリナと2人でお酒を飲みながら話す杏花。




ユリナ「もったいない。まさか両方振っちゃうなんてねー」

杏花「私はいいの、これで!」

ユリナ「まあ、杏花がいいならいいけどさ。
私はなんだかんだ大輔とより戻すと思ってたんだけどなぁ」

杏花「え…大輔と?」

ユリナ「だって杏花って恋のために動くより人生の安定を求めるタイプでしょ?
だからときめかなくなっても大輔と結婚するつもりだったわけで…

だから一度の浮気くらい許して、流れに任せてさっさと結婚するのかなーって」


杏花「そんな風に思ってたの…?」


ユリナ「あはは、ごめんごめん。ごめんごめん。
イケメンふたりから言い寄られるなんて羨ましくてちょっと意地悪言っちゃった」

杏花「もう…」

ユリナ「でも、大輔に行くと思ってたのは本当だよ。ていうか私が杏花だったらそうするし。そろそろ周りも結婚していってるし、これから新しく好きになって付き合って結婚してー、なんて道のり長すぎるし。気心知れてる大輔と結婚しちゃったほうが楽だなあって。

それでもそうしなかったってことは、それだけ圭くんへの気持ちが大きかったんでしょ?」



杏花「…そんなことないって!もう吹っ切って新しい恋探すし!圭くんもこれで心残りなく留学を選べるだろうし!私も新しい恋探すんだから!」



無理に笑っている杏花に、心配そうな顔をするユリナ。
でもそれを慰めるように杏花の肩を抱く。

ユリナ「よーし、私が合コンセッティングしてやるよ!」



○居酒屋(別の日・夜)

合コンに来たユリナと杏花。男女4・4で飲んでいる。

杏花にしつこく話しかけている男がいるけれど、杏花は圭のことばっかり考えてしまう。(圭くんはこのお酒飲んでたな、とか圭くんはこれ食べてたな、とか)

玄関にはまだ圭にもらった指輪が捨てられずにおいてある。



杏花「…ごめんなさい、私ちょっと用思い出したから抜けるね!」

ユリナ「え、杏花!?」

杏花「ごめんユリナ、ありがとう!」



○夜の街


合コンを抜け出して一人で夜の街を歩く。


杏花(やっぱり圭くんのこと、そんなにすぐは忘れられないなぁ)

そこにさっきから杏花狙いだった合コンの男が走って追いかけてくる。


男「杏花ちゃん!」

杏花「え…」

男「勝手に抜けないでよ。俺と飲みなおそうぜ」


寄っているからか、肩を組んでくる男。


杏花「すみません、わたしやっぱり…」

男「ほら、いいからどこかでちょっと休もう」


ホテル街を指さす男は力が強くてなかなか振りほどけない。
怖くなった杏花が必死に逃げようとしていると。


急にグイっと腕を引かれて、男から引き離される。


杏花「え…圭くん!?」

圭「行くよ、杏花さん」


怒ったような顔のまま、男を置いて杏花を引っ張っていく圭。
男が見えなくなった駅前で杏花を離して、


圭「気を付けてよ。お姉さん」



と言って立ち去る。

あの日、「お姉さん、大丈夫?」と声をかけてくれた圭と今の圭が重なる。

何事もなかったように去っていく圭の背中に苦しくなる杏花。



杏花(なんで…なんで忘れられないの)






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