きみが泣いたら、愛してあげる。
18.コドモじゃない、オトナにもなれない
18.コドモじゃない、オトナにもなれない
○カフェ(日曜の昼間)
大学時代の友達(美嘉)とカフェで久しぶりに会った杏花。
美嘉「えー、それはショックだね。大輔そんなことしたの!?」
杏花「まあ…でも、私が大切にできてなかったのも悪いから」
美嘉「めちゃくちゃショックだよねそれ…長年付き合った彼氏が浮気して「1人でも生きていけそう」なんて、私だったら立ち直れない」
杏花(そういえば私…立ち直れないほどは傷ついてない…?)
圭が慰めてくれたこと、次の日に結婚してほしいと現れたことを思い出す。
杏花モノローグ(そっか…落ち込む暇もないくらいいろんなことがあって、ついた傷に気付く前に圭くんがその傷をふさいでくれて…)
大輔の頭をポンと撫でる癖は、いつのまにか圭の頬を撫でる癖に入れ替わって。
「1人で生きていけそう」って言葉は、「泣かせてあげたい」って圭の優しさに書き換えられて。
大輔にもらったネックレスは、圭にもらった指輪に上書きされていた。
杏花「…なんだ、私」
杏花モノローグ(こんなに、圭くんのこと好きなんじゃん…)
○社長室(次の日)
社長室に呼ばれた杏花。
社長「ああ、急にすまないね。これは仕事には全く関係ないんだけれど…
圭が今日、留学に出発するんだ」
杏花「え…」
社長「今日の18時の便でね」
杏花がちらりと時計を見ると、17:20。
あと10分で就業時間が終わる。
社長「それで圭から渡してくれって頼まれたものがあってね」
社長が杏花に手紙を渡す。
そこには圭のきれいな字で。
『涙を見せられる人と幸せになってください。
大好きでした。 圭』
それを見た瞬間、杏花の瞳から涙がこぼれる。
社長「もしよかったら、見送りに行ってやってくれないか」
杏花「はい…っ」
社長「それから、片山くん。
…欲しい物は欲しいと手を伸ばさなければ、掴むことはできないよ。
それは子供より、大人に大切なことだ」
杏花は大きくうなずいて社長室を飛び出す。
モノローグ(ねえ、圭くん。
ただの臆病な子供だったのは、私のほうかもしれないね。)