きみが泣いたら、愛してあげる。
19.コドモシンデレラ

19.コドモシンデレラ



○空港に向かって走る青空の下

モノローグ(もういい大人なんだから
裸足のまま坂道を駆け出したり わんわん泣いて何かを欲しがったり
そんな子供みたいな恋、しないと思ってたよ_)


涙を流しながら、ヒールのまま空港に向かって走る杏花。




圭くんは私にたくさんの「好き」をくれて。
私はきみに、なにか返せたのだろうか。


現実的に考えてありえない。幸せになれる保証なんてない。
この年になって恋愛に振り回されるのなんて面倒くさいし格好悪い。

それなりに好きな人と結婚して、それなりに幸せになれればそれでいいのに。


ーーそれなのに。



杏花「圭くん!」


空港でゲートに入ろうとしていたところを呼び止める。
驚いた顔で振り返る圭。


圭「え…杏花さん!?」

杏花「ごめん…私」


息を整えながら、泣きながら駆け寄る杏花。



大人ぶってみたって、子供だってきみを馬鹿にしてみたって
私の心がきみを欲しがるんだからしかたない。


ハイヒールのままこの道を走り出すくらい、
涙でにじんで前が見えなくなるくらい、



杏花「どうしても圭くんが欲しいの…!」


ぽろぽろと涙をこぼす杏花を思いっきり抱きしめる圭。


圭「…本当に?」

杏花「っ、うん」

圭「…やっと泣いてくれたね」



優しい顔で杏花の涙をぬぐう圭。
杏花も泣き笑いで圭の瞳を見つめる。



圭「1年間、寂しがらせないように頑張るから」

杏花「…若くてかわいい子がいても、好きにならないでよ」

圭「杏花さんが1番かわいい」

杏花「…1年、待ってるから」



(きっと簡単なことじゃないだろう。
付き合い始めたばかりで、海を越えた遠距離恋愛なんて。

それでも私は、圭くんがいい)



圭「泣くのは俺の前だけにしてね」

杏花「ん、わかった」



そっとキスをして、それから圭は飛行機に乗って日本を立った。




○1年後・オフィスの前の広場(夜)


ユリナにメッセージを送る杏花。


杏花『今日飲みに行かない?』

ユリナ『ごめん、今日は旦那とデートなの』

杏花『そっか、じゃあ大丈夫』

ユリナ『ごめんねー、圭くんも明日帰国するんでしょ?』

杏花『うん、久しぶりに会う』

ユリナ『よかったじゃん、がんばれ!』



杏花(ユリナはあれから彼氏と入籍して、来年には式を挙げる予定らしい。
圭くんとの遠距離恋愛はそれなりに大変で、寂しかったり、不安だったりすることもあったけど、圭くんは毎日連絡をくれた。)



杏花「ちょっと寂しいなぁ」


ベンチに座って冬の夜空を見ながら、ため息をつく。

杏花(圭くんに、会いたい…)




ーーー「お姉さん、大丈夫?」


上から杏花の顔を覗きこむ圭。
初めて会った日の圭と重なる。


杏花「え!?」

圭「…早く会いたくて、1日早く帰ってきちゃった」

杏花「圭く…」

圭「ただいま」



優しく杏花を抱きしめる圭に、涙がこぼれる杏花。



杏花「っ…お帰り」

圭「また泣いてる。泣き虫になっちゃって」

杏花「圭くんのせいでしょ」

圭「はは、そうだね。責任取ってあげる」

杏花「え…」



杏花の薬指に、本物の婚約指輪をはめる圭。



圭「俺と結婚してくれますか?」



あの時とは違う、本当のプロポ―ズ。


杏花「喜んで…!」





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