きみが泣いたら、愛してあげる。
04.猫よりもきみのほうが、


04.猫よりもきみのほうが、


○杏花の家(翌日・土曜日の朝)

ソファーに座ってスマホとにらめっこする杏花。えいっ、と送信をタップする。はあ、とため息をついて頭を抱え、(酔って潰れて大学生に迎えに来てもらうなんて最悪すぎる…人に迷惑かけて何してるんだろう。消えてしまいたい…っ)と絶望する杏花。


杏花メッセージ『昨日は迎えに来てもらったみたいで本当にごめんなさい。反省しています。迷惑をおかけしてすみません。』


と、すぐに返信の返ってきたメッセージ画面。


圭メッセージ『堅すぎ。じゃあお礼にまた会ってよ』


う、と言葉を詰まらせる杏花。


杏花(これ以上迷惑かけたくないし何かの間違いで好きになったりしたくないし、もう会いたくなかったんだけど…お礼にって言われちゃうと…迷惑かけたのは事実だしなぁ)



杏花メッセージ『飲みに行く?』

圭メッセージ『杏花さんが潰れないように飲みじゃなくてデートにしよ』



ええっ、と驚く杏花。


杏花(デート…なんて…)


無理だ!と思い、『ごめんなさい』と入力しているうちに、スマホ画面いっぱいに広がる「着信:永瀬圭」の文字。うわ、と驚いてスマホを落としそうになりながらも、慌てて電話に出る。



〜電話〜


圭『もしもーし』
杏花『…もしもし、あの、昨日は本当に…』

圭『あー、もういいって。むしろ無防備な杏花さん見れてラッキーだったし』

杏花「っ…」

圭『…で?デートしてくれるの?』

杏花「いや、それはちょっと…」

圭『なんで?デートくらいいいじゃん』

杏花「よくないの!」

圭『惚れちゃったら困るから?』

杏花「は、はぁ!?そんなわけないでしょ」

圭『じゃあいいじゃん。大学生のお子様なんかに惚れないんでしょ?』

杏花「そうよ、当たり前でしょ」

圭『じゃあデートして証明して見せてよ』

杏花「わかったわよ!……あ」

圭『ふっ、じゃあ日曜日11時に駅前で』

杏花「あ、ちょっ…」



さっさと切れた通話画面を見て途方にくれる杏花。

杏花(か、完全に乗せられてしまった…)

「もう、生意気…」と呟きながらも、頬が赤い杏花。



○駅前(日曜日・11時)


(どうしよう…なんか柄にもなく緊張してきた…)とため息をついて改札を通る杏花。杏花の服は黒いレースのトップスにベージュのスッキリしたロングスカート。改札を出て待ち合わせした時計の柱の下を見ると、周りの人たちが振り返るほど格好いい圭。圭の服はシンプルな黒のパンツに白のトップス、黒チェックのジャケット。


杏花(なんかキラキラして見える…顔がいいってずるいな…)


戸惑う杏花に気付いて、見ていたスマホから顔を上げて嬉しそうに笑う圭。その笑顔に思わずドキッとしてしまう。


圭「ありがと、来てくれて嬉しい」

杏花「ご、強引に誘ったくせに…」

圭「はは、でも来てくれるって信じてた」

杏花「…っ」


杏花モノローグ(大輔とはいつも家で会ったり仕事帰りに飲みに行くだけだったから、待ち合わせしてデートなんて久しぶりだな…)



○猫カフェ(昼間)


杏花「わぁ…猫カフェだ!初めて来た!」


初めての猫カフェにはしゃぐ杏花と、そんな杏花を見て嬉しそうな圭。
座って猫を膝に乗せて楽しむ杏花。圭はあまり猫を触ろうとしない。


杏花「なんで猫カフェなの?」
圭「んー、猫好きかなーと思って」
杏花「よくわかったね!」


子供みたいに無邪気にはしゃぐ杏花に、圭もキュンとして少し頬が赤くなる。
猫を撫でながら(杏花だけ)、話す2人。


杏花「え、会社の勉強もしながらバイトもしてるの?」

圭「うん。社長の息子なんだからバイトしなくてもお金あるでしょって言われるけど、自分で使うお金は自分で稼ぎたいから。社会勉強にもなるし」


杏花「意外と真面目なんだね…見直したよ」

圭「どんな奴だと思ってたんだよ。どう見たって真面目だろ」

杏花「あはは」


楽しそうに話す2人。全然猫を触らない圭。


杏花「猫触らないの?」

圭「え、ああ…」

杏花「…もしかして猫怖い?」

圭「っ…そんなわけ…」


にやりと笑って猫を抱っこして近づけると、ビクッと肩を揺らす圭。
決まり悪そうに赤くなって目をそらす圭。


杏花「可愛いところあるじゃん」

圭「…うるせー」

杏花「猫苦手なのになんで猫カフェにしたのよ?」

圭「……杏花さんの好きそうなもの、猫しか知らなかったから」


前髪をくしゃっとして恥ずかしがって顔を隠す圭、かっこ悪…と小さく呟く。


杏花「私、猫好きなんて言ったっけ?」

圭「あの日、元彼と会う前、猫見てたじゃないすか…」

杏花「あ…そういえばそうだっけ…」



大輔を待っている会社の前で猫を見ていた時の回想。
(そんなこと覚えててくれたんだ…)と感驚く杏花。


杏花「…ありがとうね、元気付けようとしてくれたんでしょ?」


優しくふわりと笑う杏花。
圭はそっと杏花の頬に触れる。驚いて目を見張る杏花。


圭「…笑ってる方がかわいい」

杏花「っ……なに、言って」



真っ赤になってしまう杏花に、ふっと優しく笑いかけて立ち上がる圭。


圭「…そろそろ行こっか」

杏花「う、うん…」


杏花(なによ、ちょっと余裕な顔しちゃって生意気…)



○猫カフェの外(夕方)


楽しかったねー、と笑っている2人。


杏花「圭くん、今日はありが…」

女子大生「圭…?」



お礼を言おうとした杏花の言葉を遮る声。
たまたま通りかかった女子大生2人組のうちの1人が驚いた顔で圭を呼ぶ。


圭「実晴(みはる)…」



驚いたような、少し気まずそうな圭。




< 4 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop