届かぬ指先─映《ば》えない恋の叶え方
学校は霊園公園から10分ちょっとのところにある。

陽当たりの良いテラスとバルコニーを備えたお洒落なモールを中心に開けた洗練された駅前の繁華街を抜ける。緑の多い閑静な住宅街に差し掛かると、コンクリート造の校舎が見えた。

正門から入って自転車を駐輪場に停めると、私はもう一度門の前に戻る。
門柱には『県立星郷(ほしさと)高等学校』と刻まれている。

門の前にしゃがんでスマホを構えた。


「うーん…」


門柱と校舎が収まる絶妙な構図を狙ってしゃがんだまま右に左に動いたり、スマホを傾けたりする。


(いい具合のアングルにならないなぁ…)

何枚かアップして全体のイメージが伝わるようにしようかな…


カシャッ、カシャッ!
とりあえず門柱を中心に一枚。
玄関前の桜が写り込むように一枚。
校舎を見上げて一枚。

スマホを構えた腕を伸ばしたり縮めたりしながら、ちょっと迷う。


画面を睨みながらふぅと溜め息を吐いたときだった。


「…撮りましょーか?写真」


「!!」

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