届かぬ指先─映《ば》えない恋の叶え方
頭の上に聞こえた声に顔をあげると、そこには男の子がひとり、こちらに右手を差し出して立っていた。


午後の陽射しを背負う長身に広い肩。運動部っぽい日に焼けた肌に制服の白いシャツが映える。



「門だけ撮っててもしょうがないでしょ?入りなよ」


「あ、の…」


(SNSに新しく通う学校を上げるだけだから私は写らなくていいんだけど…)


でもわざわざ声を掛けてくれたのに断るのもなんだか悪い気がして、私は彼におずおずとスマホを手渡した。


「あの…ありがとうございます」


門柱の校名の脇に遠慮がちに立つ。


「撮るよ」


「は、はい!」


カシャッ!


(「チーズ!」とかないのね…)

いや別にいいんだけど。


「これでいい?」

彼がスマホをこちらに差し出しながら、大股でさくさくと近付いてきた。


「あ、はい…」

私はスマホを受け取って、撮ったばかりの写真を確認する。
門の前で明らかに表情もポーズも硬い私が佇む様は、出来の悪い入学式の記念写真みたいだ。

多分これを使うことはないけど…と思いながらもお礼を言おうとしたときだった。



「…綺麗だな」



(え…?)

< 4 / 16 >

この作品をシェア

pagetop