後輩はレンタル彼氏
行動も雰囲気もあまりにも違う。
けれど奈帆は口を開く。
奈帆「涼太、くん、だよね? 津雲くんの下の名前」
ピクッと反応した彼にやっぱりそうなのだと確信して顔を上げ、じっと彼を見つめる。
すると表情がやわらいでいつもの津雲くんぽくなった。
リョウ「知ってて、くれたんですね。名前」
奈帆「直属の後輩の名前くらい当たり前だよ」
奈帆(やっぱり津雲くん)
ほっと息をつく。
奈帆「どうしてこんなこと……。というよりリョウだなんて、ほとんど本名じゃない」
意見する奈帆のテーブルにあった手に手を重ねられてハッとする。
再び、雰囲気がリョウに戻っている。
というより何かを企んでいるような妖艶で、それでいて悪い顔。
重ねられた手の上で指を滑らされて、ぶわっと全身が熱くなる。
リョウ「奈帆だって、ダメだよ。こんな怪しいやつを頼むなんて」
奈帆「怪しいって……」
意見したいのに、本当に怪しい雰囲気を漂わせる彼に戸惑って目を伏せる。
奈帆「あの、じゃ、もうやめにしましょう」
立ち上がろうとした手をもう一度つかまれ、力強く握られる。
リョウ「ダメだよ。ここで帰るなんて。するんでしょ? デート」
奈帆「津雲くんとはできないよ」
リョウ「俺はリョウだよ」
妖艶に微笑んだ彼に心臓が不穏な音を立てた。