後輩はレンタル彼氏
リョウと奈帆の場面に戻り、
二人は駅で別れるところ。
初回はお試しのつもりでランチデートのみの申し込みだった。
レンタル料は1時間4千円。
頼めるのは2時間からで、奈帆は2時間の利用のため8千円。
前払い分の4千円を引いた、4千円が封筒に入っている。
これでも相場の半額くらい。
奈帆、お金の入った封筒を渡す。
奈帆「これ」
リョウは一瞬、ためらいつつも受け取る。
リョウ「ああ。ありがとう」
奈帆(いつもの津雲くんなら「すみません。助かります。ありがとうございます」って恐縮しつつ、満面の笑みで返してくれると思うのに)
ショックを受けながらも、ぶっきらぼうな様にどうしてか男を感じた。
リョウ「手渡しに、したんだね」
これも選択できた。
奈帆は敢えてレンタル彼氏の料金を本人へ手渡し、にしたのだ。
奈帆(これはレンタル。本当の彼氏じゃない。その線引きが欲しかった)
リョウ「次も会えるのを、待ってるから」
手を引かれ、よろめきながら一歩、彼に近づく。
腰を屈めたリョウの顔がすぐ目の前にあった。
リョウ「俺のこと、忘れないで」
すがるような目からそらせずに、頷くことしかできなかった。