後輩はレンタル彼氏
奈帆、帰宅後のアパートにて
奈帆(本物の津雲くんが来るなんて……)
レンタル彼氏の『ラブスイート』
顔写真がないため、プロフィールしかわからなかった。
『優しく穏やかな雰囲気で垂れ目』
津雲を思い起こさせるイメージについ、その人をお願いしていた。
レンタル彼氏になる人の名前さえも載っていないサイト。
奈帆(名前まで『リョウ』とわかっていたら、その人にしなかったかな。ううん。きっと名前までリョウだって知ったらますます迷わず彼を選んでた)
彼に握られた手をじっと見つめて顔を赤らめる。
奈帆(けれど、彼にとっては、これもお仕事だから)
わかりきったことなのに、そう思うと胸の奥が軋むように痛くなる。
奈帆(こんなことになるのなら、素直に津雲くんに理由を話して恋人役をしてもらえばよかったのかな……)
後悔が奈帆を襲う。
けれど自身の考えを否定するように頭を左右に振った。
奈帆「これでよかったんだよ。きっと」
奈帆は自分自身を納得させるように呟いて言い聞かせた。