後輩はレンタル彼氏
残業した18時ごろ。
ぼんやりしていて、失敗が多く、いつもより仕事に手間取ってしまった。
ため息をつき、もう帰ろうかなと思っていたそのとき。
同僚女「藤野先輩。『Mamma Allegra』様より1番にお電話です」
『Mamma Allegra』
今、人気のイタリア料理店。
数店舗を展開するオーナーが奈帆の勧めた大豆を契約してくれている。
奈帆「いつもお世話になっております。藤野です」
佐伯「お世話になります。『Mamma Allegra』の佐伯です。今朝、急ぎで発注をお願いした大豆。さっき届いたのは有り難かったんだけど……」
奈帆「何か、不手際がありましたでしょうか」
佐伯「お願いした量と、違うんじゃないかな。使いやすいように1kgに小分けされたものが10袋。それが5袋しか届いていないんだ」
全身の血が引いていくのがわかる。
奈帆「すぐに届けます! 申し訳ありません!」
今朝のことなのに自分が10袋発注したかどうか怪しい。
電話を切って課長に報告する。
奈帆「すみません。私のミスで発注間違いを起こしてしまったので、今からすぐに手配して直接届けます」
課長「そうか。わかった。気をつけて」
厳しい顔つきの課長に深くお辞儀をして、慌ただしく鞄をつかむ。
頭ごなしに怒らない課長を今日ほど尊敬する日はない。
お叱りは後からいくらでも受ける。
今は、お客様に届けなければ。
津雲「俺も! 俺も行きます!」
帰ろうとしていた津雲が奈帆の後に続いた。